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短編歴史小説 信長の夢

天正10年(1582)の5月、毎晩のように同じ悪夢にうなされ、不眠症の織田信長は悪夢から解放されるために、とんでもない事を考えて実行に移します。

   

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11.胡蝶

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夢の痕 美濃姫異伝




 光秀が決心を固めるために愛宕山に籠もっていた頃、安土城の信長は久し振りに正妻である胡蝶の部屋に来ていた。

「どうしたのでございます?」と胡蝶は驚いたように信長を見つめた。信長が夜になって自分のもとに来るのは、もう何年振りかの事だった。

「なに、そちの顔が見たくなったのでな」

「まあ、お珍しい事」と胡蝶は笑った。

 信長は胡蝶の前にどかっと座り込んだ。胡蝶は侍女(じじょ)を下がらせた。

「わたしの事など、とうの昔にお忘れになったのではございませんか?」

「なに、マムシの娘を忘れた事など、ありゃせん」

「懐かしいお言葉、マムシだのと」

「随分、昔のような気がするのう」

「はい、もうずっと昔の事でございます」

「そちがわしの妻となって、もう三十年も経っとるんじゃのう‥‥‥早いもんじゃ。そちが尾張に来る時、マムシの娘が来ると聞いて、わしはどんな化け物が来るのかと楽しみにしておった。しかし、そちは、ただの女子(おなご)じゃった」

「覚えております。殿様はわたしの顔をじっと見つめておりました。あの時、わたしは本当にびっくりいたしました。お噂では、たわけ者と聞いておりましたが、あの時の殿様のお姿ときたら‥‥‥わたしはもう恐ろしくて、泣きたい気持ちでございました」

「あの時、そちはわしを睨んでおったぞ」

「わたしもマムシの娘でございます。尾張のたわけ者に負けられないと精一杯、強がっていたのでございます」

「懐かしいのう‥‥‥しかし、そちはいつまでも若いのう」

「嫌ですよ。何をおっしゃいます」

 信長は急に胡蝶を抱き寄せた。

「一体、どうしたのです?」

 胡蝶は不思議そうに信長を見ていた。

「今夜はのう。そちを抱きながら昔話でもしようと思ってのう」

「何だか変ですわね。若い側室が大勢おりましょうに」

「今夜はそちが抱きたいんじゃ」

 信長は胡蝶の胸元に手を差し入れ、豊満な乳房を愛撫し始めた。

「そちが子を産んでくれたら、立派な跡継ぎができたのにのう」

「それを言って下さいますな」

「分かっておる」

 胡蝶は信長の顔を見上げながら、お互いに若かった頃の事を思い出していたが、何となく、嫌な予感がするのを感じていた。

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